ミズギボウシ 葦毛湿原の花
ミズギボウシ
キジカクシ科 多年生草本
高さは40~65㎝。
愛知県以西に分布。
日当たりのよい低湿地に生える。
花期は7月から9月終わり頃。
近年、APG分類体系に準拠した図鑑が多くなった。
ユリ科の方がピンとくるが、そういうことらしい。
花は下から順番に咲いていく。
一つの花茎に一つか二つの開花のものが多い。
あとは、つぼみか開花後のしおれた花である。
オオバギボウシなどに比べると、圧倒的に花が少ない。
ギボウシの仲間では一番葉っぱの幅が狭い。
群生することなく、湿原内にポツンポツンと咲いている。
ちょっと淋しそうな花である。
弱々しくて、一見、貧相にみえるけど、
じっくり見ると、ストライプがとても美しい。
いつまでも咲いていてほしい花である。
サワギキョウ 葦毛湿原の花
サワギキョウ
キキョウ科 多年生草本
高さは0.6~1m。
山野の湿地に生え、しばしば群生する。
夏の終わりから秋の初めにかけて日当たりのよい湿地に生える。
花期は8~9月と図鑑ではなっているが、ここでは9月~10月上旬。
亜高山以上の高層湿原や深山のほとりが本来の居場所。
だからここでは涼しくなった9月末ごろ咲くのかもしれない。
縁が細かいギザギザの葉っぱは無柄で多数互生する。
葉っぱは上のほうにいくほど小型になる。
茎は無毛で、枝分かれしない。
その代わりでもないとおもうが、花びらの縁は毛がいっぱいだ。
濃紫色の花が多数、下から上へ咲き進む。
花の形はミゾカクシ属独特のものだ。
沢に咲くキキョウのような花なので、サワギキョウの名。
でも私の見たところでは、葉っぱの付き方と色ぐらいしか・・・
こちらはリンドウ科だが、キキョウの花に似てなくもない。
サワギキョウは湿原内に固まって咲くところがあり壮観だ。
背が高いので、風の影響で行儀悪くなることもある。
自然界では少数派の紫色の花はよく目立つ。
秋のサワギキョウはとても涼しげだ。
シラタマホシクサ 葦毛湿原の花
トンボソウ 葦毛湿原の花
トンボソウ
ラン科 多年生草本
高さは15~30㎝ほど。
花期は7月中旬~下旬で、咲いてる期間は短い。
湿り気のある林内を好むようである。
湿原内は、日当たり良すぎで、気に入らないのか見つからない。
沢近くの林内にまとまって生える場所がある。
そこの地面は、ぐじゅぐじゅに湿っている。
水がたいそうのお好みのようである。
葉は下の方に2枚つく。
淡緑色の花を行儀よく並べて咲かせる。
まわりの緑に溶け込んで、花は目立たない。
素直にまっすぐ上に花穂を伸ばすものが多い気がする。
名前は花の姿がトンボに似ることからだそうだ。
私には残念ながらトンボに見えない。
オタマジャクシかウーパールーパーに見える。
私だけかもしれないが・・・
この花を見ると ”蚊” を思い出す。
写真を撮っている間、ずっと蚊にたかられる。
おっ!餌がきたー! いつも一人だから集中砲火。
虫よけスプレーも効き目なしだ。
耳元でブンブン、集中力をそがれる。
花が蚊に見えてくる・・・
サギソウ 葦毛湿原の花
サギソウ
ラン科 多年生草本
日当たりがよく、水がたまっているような低地の湿地にはえる。
そんなややこしい条件の所は限られてくる。
開発により湿地が減少し、自生地が少なくなっている。
加えて心無い乱獲も手伝って、絶滅してしまった地区もある。
この言いようのない美しく完成された造形美が災いしている。
誰が何の為にこの形を生み出したのだろうか。
花の形が、翼を広げた白鷺(シラサギ)にそっくりだ。
ここまで名前と花姿が一致し、命名に合点がいく花を他に知らない。
一度名前を聞いたら、誰もたぶん忘れないないだろう。
高さは15~40㎝。花期は7月下旬から8月中旬。
お盆休み前後がちょうど花の見ごろとなる。
花は1~4個付き、白色で直径約3㎝。
花の下の距は3~4㎝で垂れ下がっている。
この距でやじろべいのようにバランスをとっているように見える。
地下にまるい球根(球茎)があって、そこから細い地下蔔枝をのばす。
その先に新しい球茎をつくり、群落をつくっていく。
なぜか葦毛湿原では単発で咲いているものが多い気がする。
いつまでも咲き続けてほしい美しい花である。
ところでシラサギの飛翔姿、リアルに見る機会は少ない。
そこで、シラサギを図鑑で調べてみてびっくりした。
シラサギという名前の鳥はいないのだ。
いろんなサギの仲間の白いものは、みんなシラサギと呼ぶのだそうだ。
長年の思い込みと無知がとても恥ずかしい。
最期の一枚は、季節外れに咲いていた花だ。
卑屈になることなく、堂々たる飛翔である。
エンシュウムヨウラン 葦毛湿原の花
エンシュウムヨウラン
ラン科 多年生草本
林内の日陰に生える腐生植物。
葉緑素を持たず、菌から栄養をもらって生活しているらしい。
分布は愛知県と静岡県とする説が多かった。
近年、いろんなところで見つかっているとのこと。
ここでは駐車場から湿原にいたる林道脇で見られる。
最初ムヨウランと聞いて、役立たずの無用蘭かとおもった。
大変失礼した。葉っぱがない無葉蘭だった。
地味な色合いで、土の色に同化して見つけにくい。
腰をかがめて探すと、けっこうな数が見つかる。
高さは15~30㎝。20㎝前後のものが多い気がする。
花期は4月下旬~5月下旬。
花の長さは1.5㎝くらいで、色は淡褐色から黄褐色。
完全に平開する花は少ない。
たいがいは、半開きかつぼんでいる。
地味だが、近づいてよーく見ると確かにランの花だ。
花後の種の姿は、なかなかしゃれている。
花といっしょに写ってる種は、前の年の花後の姿だ。
さいごの写真は全草黄色のキイムヨウラン。
もしかしたらキバナエンシュウムヨウラン。
ムヨウランは、なかなかきれいに咲いてくれない。
天候、気温、湿度、時間など、開花の条件があるようだ。
この花、なぜか虫に好かれる。
しかもアブラムシのような、良からぬ虫だ。
なかなかきれいな花を見つけられない、幻の花。